エレベーターの安全性がまた揺らいでいる。
今度は利用者が乗るかごの枠などに、強度不足の鋼材が使われていたことが発覚した。
地震などの災害時には変形して動かなくなる可能性があるという。これでは怖くてエレベーターに乗れない。
強度が本来の70%程度しかない鋼材が使われていたのは、業界大手のフジテック(滋賀県彦根市)が二○○二年九月から今年六月までに製造した約一万二千七百基だ。
このうち、建築基準法の基準を下回っていたのは五百六十基にのぼっている。安全をおろそかにした悪質な偽装行為だ。
国土交通省は、エレベーターの落下や破壊がすぐに起きるわけではないと説明しているが、違法のエレベーターで何が起きても不思議はない。事態をもっと深刻に受け止めるべきだ。
強度不足が指摘された五百六十基の設置場所は、公共施設と商業ビルに集中している。道内では札幌の地下鉄麻生駅、JR森林公園駅、札幌市厚別温水プールなど十カ所で使われていた。
いずれも不特定多数の人たちが利用する場所だ。フジテックはすでに一部で補強工事に着手しているが、さらに工事を進め、早急に安全を確保しなければならない。
強度不足の鋼材の納入をめぐっては、口頭での合意があったとする納入業者と、それを否定するフジテックの見解が真っ向から対立している。
真相は、双方が設置した第三者委員会の調査を待たなければならないが、利用者の安全を考えれば、責任のなすり合いをしている場合ではない。再発防止に万全を尽くす時だ。
一方、フジテックは今年一月の段階で強度不足を把握していたことを認めている。なぜ七月まで公表しなかったのか。明確な説明を求めたい。
昨年六月、シンドラー社のエレベーターで高校生がドアに挟まれて死亡した事故を受け、業界は安全性の向上を誓ったはずだ。ところが、その後もトラブルは後を絶たない。
六月には、日本オーチス社などのエレベーターで、金属線の束が破断する事故が相次いだ。東京では破断した金属線の摩擦で火災が起きている。無人のエレベーターが天井に激突する事故もあった。一歩間違えば大惨事になるところだった。
全国では現在、約七十万基ものエレベーターが稼働している。建物の高層化が進む中で、エレベーターは日常生活になくてはならない移動手段だ。
国交省は、トラブルが起きるたびに業界に緊急点検などを指示してきたが、これだけ事故が頻発するなら、問題を起こした業者に対する行政処分を強化したり、事故報告を義務化するなどの検討が必要になろう。
(北海道新聞より引用)
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